宝塚市立病院がめざす病院像

 宝塚市立病院は、昭和59年5月に開設された病床約400の基幹病院であるが、他の多くの公立病院と同様に赤字体質である。この病院の経営改革案として、市の病院当局より宝塚市立病院がめざす病院像が示されたので、次の議会では市立病院の経営改革について質問するつもりである。(9月28日午後登壇予定)

 公立病院は救急医療をはじめとして、公益上必要な不採算医療も行う必要があるので、その部分は国の示す基準に従って市の一般財源から繰り入れ(補助)を受けることになっている。これを基準内繰り入れというが、これでは足りないため、多額の基準外繰り入れを受けている。これが問題なのである。当然、市の病院当局としてはこれまでも経営改革の努力を重ねてきたが、効果はあまりなかった。他の病院との経営統合も検討されたが、適当な統合の相手も見つからず、うまくゆかなかったようである。公立病院の赤字は国にとっても大問題であるため、国から全国の公立病院に対して公立病院経営強化ガイドラインが示され、これに従って経営強化プランをまとめることが指示された。このベースとして市の当局がまとめたのが、宝塚市立病院がめざす病院像である。

 国が示す公立病院経営強化ガイドラインは、その題名からして、国が公立病院をサポートするために出された文書のように見える。その内容も、国が構想する地域医療構想地域包括ケアシステムを、公立病院に推進させようとするもので、サッと読んだところでは至極まっとうな内容である。ところが、地域医療構想とは、単純化して言えば、地域ごとに病院のベッド数をコントロールしようとするものであり、地域包括ケアシステムとは、病院に入院する患者をできるだけ減らして、介護施設あるいは在宅療養に移そうとするものである。そしてそれらの目的は、いずれも医療費削減である。ガイドラインは、そのための方法として、公立病院どうしだけでなく、公立病院と民間病院の垣根を越えて、機能分化・連携強化、そして経営統合まで検討せよ、といっている。まさにに鬼のように過酷な内容なのである。

 宝塚市立病院がめざす病院像で示された改革案は、他の病院との経営統合などどこ吹く風といった感じで、あくまで市立病院単独での改革案に終始している。そしてその改革方法はあくまで売り上げ(医業収益)を確保することである。具体的には、患者1人当りの入院単価として65,000円を確保し、1日当りの入院患者数としては340人を維持するという。しかし、いずれも過去に1度、それに近い数字が達成できたというだけで、それが維持できる根拠はなく、十分な目標とも言えない。過去最高の入院単価64,417円を記録した令和3年度はコロナ禍で入院患者が263人しかなかったし、1日当りの入院患者数340人を記録した令和元年度は、大赤字で4億円の基準外繰り入れを行っているのである。

 そもそも医療は成長産業ではないし(産業といってよいかどうかも疑わしい)、国はあくまでも医療費を削減するため、病院のベッドの数も入院患者数も減らそうとしているのである。宝塚市立病院がめざす病院像で示された市の改革案は、何の目新しさも改革に対する意欲も感じられないばかりか、国の医療政策とも相容れるところがない。まったく不十分なものと言わざるを得ない。

宝塚市立病院