ポスティングは違法か

 私は、今は無所属であり、特定の支持者や支援団体もなく、日常の政治活動などというものはほとんどしていない。ただ唯一やっているのが、自分の意見や議会での活動を報告するビラ(市政報告)を作成して、市民に配布することである。昨年12月に「2021年度市政報告」を作成し、2万5000部印刷して、ようやく残り1000部となるまで配り終えたところである。いわゆるポスティング業者や支援団体に依頼する議員が多いと思うが、私はコスト削減と運動不足解消を兼ねて、自分でやっている。

 ところが、このポスティングが、なかなか一筋縄でいくものではないのである。1戸建てのお宅に配布する場合は、とにかく汗をかいて歩きまわることが必要になるが、山の手の住宅地では、1軒1軒のお宅のために階段を上り下りしなければならないところがある。ポストが、わかりくいところや手の届きにくいところにあったり、壊れているお宅もある。旧郵政省が、ポストはできるだけ公道に面したわかりやすいところに設置せよ、と指導しなかったのが実に不思議である。アメリカでは、ゼネラルポストマネージャー(郵便局長?)が認定したポストでなければ、郵便物は配布されない。

 マンションに配布する場合は、歩き回る必要もなく、1度に大量に配布できてラクだと思われるかもしれない。しかし、厄介なことに、最近のマンションはポスティング禁止をうたっているマンションがやたら多い。集合メール室内に「無断ポスティング禁止。発見次第警察に通報する」などと貼り紙が掲示されている。こう掲示されていれば、管理人に現物を見せて「ポスティングをしてよいか」と尋ね、「私は議員である」ということも付け加えて言えば、半分ぐらいはOKしてくれる。しかし半分は頑なに拒絶される。

 そんなマンションの住人でも政治に無関心な人ばかりではないし、政治家には自分の意見や活動内容を市民に報告する義務がある。マンションの誰がどのように決めているかを脇に置くとしても、マンションの「ポスティング禁止」は非常に理不尽であり、管理人がいないときは、私はそんな掲示は存在しないものと勝手に決めていた。しかし、本当のモメ事になってしまったら、過去に「自衛隊官舎ビラ配布事件」「葛飾マンションビラ配布事件」などの最高歳判例もあり(いずれもK党がらみ)、一抹の不安があった。

 ところが、私はつい先日まで知らなかったのであるが、そんな過去の判例を吹っ飛ばす新しい最高裁判決が、昨年1月に出ていたのである。東京三鷹市内のマンションで、市議会議員の支援者がビラを配布した事件で最高裁は、「ポスティング禁止などと掲示がされたマンションであっても、①ビラを配布する目的でメール室内に入ることは、住居侵入罪にあたらない、②ビラをポストに投函する程度のことは、民事上の不法行為にも当らない」と判示したのである。こういう判決が出たことは、大抵のマンション管理人や住人は知らないであろうが、ポスティングをする側にとっては非常に心強く、少なくともこれからうしろめたい思いはしなくてもすみそうである。