日本のモノ作り

 一人娘がこの春、北大を卒業して、愛知県のT自動車に就職した。独身寮に入ったというので、掃除でも手伝ってやろうと妻と2人で行ったところ、寮というよりも超高層の独身者用住宅で、エアコンやトイレのウォシュレットまで完備していてビックリした。私は大学を卒業して就職した会社が電機メーカーの日立製作所であるが、この会社も電機業界では最大手で、大いに希望を持って入社したものである。ところが独身寮は6畳の2人部屋で、コンセントは一人一ツ。電機メーカーの社員になったのに、満足に電化製品も使えない、というありさまであった。

 日立は当時、コンピューターでは米国のIBM社を目標とし、半導体の開発では、富士通やNEC、三菱電機などと激しい競争を繰り広げていた。当時、半導体は産業のコメと言われ、日本は半導体の生産で世界第一位のシェアを固めつつあったので、日本の電機業界の繁栄は永遠に続くように思われた。ところが今、日本の電機業界は中国や韓国、台湾に主役の座を奪われつつある。特にかつての花形であった半導体の生産では、日本の各メーカーは見る影もなく、業界の形態も、設計を行なうファブレスと、受託生産を専門に行なうファウンドリに分かれるなど、根本的に変わってしまったらしい。

 今、大学を卒業した学生が、希望を持って就職できるような会社は、日本からは徐々に消滅しつつあるように思われる。特に社会の富を生み出す根本の存在であるところの製造業(モノ作り産業)の衰退が著しい。かつて大手の電機メーカーは、大卒社員だけでも毎年1000人以上を採用していたが、今やそんな勢いのあるメーカーはどこにも存在しない。そんな日本のモノ作り産業の中で、唯一元気があるのが自動車産業である。その自動車産業も、世界的な環境規制の強化や燃料価格の高騰で、これから激浪に見舞われることが予想されるが、なんとかがんばってほしいものである。

 参考までに、面白い写真を見つけたので添付します。映画「キューポラのある町」で、吉永小百合演ずる女高生?が半導体工場に就職するのです。ロケには私が就職する前の日立武蔵工場が使われたようです。当時、半導体というコトバはまだ一般的でなく、トランジスタと言っていました。

前の記事

共産党も現実路線?