コロナと医療業界

コロナ感染症の新規感染者が爆発的に増えて、政府の責任を問う声が日増しに高まっている。確かに伝染病の拡大を防ぐことは国の責務である。しかし、病気にかかからないように健康に注意することは国民の義務でもある。やたら政府の責任を追求するのは、いかがなものかと思う。

しかし、医療というものを産業として考えてみると、これは実に特殊な業界である。GNP(国民総生産)の実に8%も占める巨大な業界でありながら、自由主義経済の原則が全然成り立たない。普通の業界であれば、モノの価格は経済の原則に従って、需要と供給の兼ね合いで決まる。しかし、医療における診療報酬や薬価は、厚生省と医師会・製薬業界との話し合いで決まる。いわば公認の官製談合である。しかも、その話し合いでは、つねに医師会・製薬業界の利益が優先され、厚生省の責任ある姿勢がまるで示されなかった。

医師という職業の育成についても大きな問題がある。現在の大学入試において医学部入試は特別の難関となっており、しかも私大の医学部に入学するためには巨額の入学金・授業料が必要となる。これは厚生省と文部省が、大学の医学部新設を容易に認めないめであり、こうすることによって、医師という職業を、過当競争にならないように保護しているのである。このような行政が、このコロナ下の病院・医師不足で完全にまちがっていたことが明らかとなった。医療の崩壊は、過去のまちがった医療行政の積み重ねが原因なのである。

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