首長の後継者

昨日、兵庫県知事の退任式が盛大に行われたらしい(写真)。井戸知事は5期20年を勤め、歴代最長であるという。しかし、そんなことは何の功績にもならないと思う。井戸知事は、震災後の苦しい財政事情の下で、行政に精通した知事としてソツなく県政の舵取りをしてこられた。この点は大いに評価してよい。しかし、トップの最後の大切な仕事は、自分を支えてくれた有能な部下の中から後継者を定めることである。この点、井戸知事はトップとして責任を果たすことができなかった。5期も長く知事の座に居座ったために、倦怠感を生み、自分の後継者を支えるはずの政党の離反を招いてしまったのである。民間の大企業のトップは通常4年、官庁のトップなら長くても2年で交代する。組織として毎年毎年多くの新人を迎え入れ、その中には必ず有能な人もいるはずだから、組織の新陳代謝を図ることが必要なのである。

この点、宝塚市の中川前市長はボロが出ないうちに退任され、ご自分の後継者(山崎市長)にうまくバトンタッチをされたものと思う。山崎市長は、中川市長の後援団体の中から突然名乗り出た無名の新人であったが、立憲民主党、社会民主党、共産党の各党ともあっさり支持を決め、誰もが、山崎氏を中川市長の後継候補と理解したことと思う。しかし、先月の議会では、驚いたことに「私は中川市長の後継者ではありません」と明言された。「中川市長から後継指名を受けたことはなく、自分でも後継者と名乗ったことはない」というのがその理由である。しかし、そんなことはたとえ事実であるとしても、自分勝手な理屈にすぎない。普通の市民には、山崎氏が中川市長の後継候補に見えていたことが重要なのである。新市長として前市長のしがらみもないフリーハンドを手にしたい、という気持ちはわかる。しかし、「選挙のときは、中川市長はご自分の支持者にあいさつをされただけであって、私は応援をしてもらっていない」などと言っては、政治家としてのモラルも疑われると思う。

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