渋沢栄一と高橋是清

明治の元勲といっても、たまたま明治維新のドサクサで権力の一端に連なることができただけ、という幸運な御仁が多かったのではないだろうか。たとえば昔の千円札の伊藤博文など立派な肖像が描かれているが、実際は赤ら顔で女グセの悪いただのおっさんであったらしい。

そこへ行くと、今NHKの大河ドラマで主人公となっている渋沢栄一は立派な人であると思う。私も名前ぐらいは知っていたが、農民から将軍の直参となるなど、波乱万丈の人生を送った人とは知らなかった。しかもこの人の場合、明治維新以後も、日本経済の発展のために尽くした功績は限りない。NHKがこの人をとりあげたことは、今日の元気がない日本に勇気を与えてくれる、まことにタイムリーな企画であると思う。

渋沢栄一とほぼ同時代に、日本経済の発展のために功績が大きかった人物として高橋是清がいる。この人の波乱万丈ぶりは、渋沢栄一以上にすさまじい。少年時代に仙台藩から選ばれてアメリカに留学したが、奴隷として売られるなど満足に勉強することはできなかった。しかし明治維新で帰国してからは、破天荒な浮き沈みの後、政府の要人として日露戦争遂行のための外債募集に成功し、晩年は昭和初期の金融恐慌を沈静化した。そして最後はよく知られるように、二・二六事件で青年将校の凶弾に倒れた。自伝があるが、津本陽氏の小説もクールな筆致でよいと思う。

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