一発勝負の知事選挙
兵庫県知事候補の金沢和夫氏が、今回の知事選挙に人生のすべてをかけているという。それはそうだと思う。知事選挙は国政選挙以上に選挙区が広く、しかも当選できるのは一人だけという大変な選挙である。金沢氏は、長年副知事として現職の井戸知事を支えてきた人であり、当然、次は自分がなりたいという気持ちは強いと思う。年齢的にもここで落選したらおそらく次はない。その金沢氏の対抗馬として現れたのが斉藤氏であるが、斉藤氏も兵庫県出身の官僚であり、官職を辞しての出馬である。どちらも絶対に負けるわけにはいかない。しかもどちらも元行政マンとして、仕事ができることはまちがいないから、私は今回の兵庫県知事選挙は、あるべき望ましい選挙が実現したと思っている。
それに比べると、東京都知事選挙などは、日本の最も墜落した選挙の見本である。歴代の都知事を見ると、青島幸男、石原慎太郎・・小池百合子氏など、タレントまがいの人物が続く。これらの知事を選んだ都民の見識を糺したい気もするが、都民も限られた選択肢の中からムリヤリ選択を迫られた被害者である。知事としてふさわしい人は他にゴマンといるかも知れないが、よほど知名度のある人か大政党の候補者でないと当選見込みのある候補者にはならないのである。しかも東京では、大政党の候補者ですらタレント候補には勝ち目がない状態が続いている。一方、首都圏や関西圏以外の地方では、タレント候補の弊害はないかわりに、官僚出身知事による長期政権が無風選挙で続く。ひとたび知事になると、マスコミなどに露出する機会が圧倒的に増えるだけでなく、日本人の習性として、時の権力者に追従する人間が多数派だからそうなるのである。
この傾向を改善する最善の方法は、有権者が政治にもっと関心をもち賢くなることであるが、もう1ついい方法がある。それは、知事や市長などの首長は直接選挙ではなく、議会で議員の中から選ぶようににすることである。現に内閣総理大臣は国会でそのようにして選ばれているのであるから、知事や市長を直接選挙で選ばなければならない理由はない。直接選挙には限界があり、今の首長選挙はその限界を超えている。普通の有権者にとっては首長選挙の候補者は、はるか彼方の遠い存在であるから、とりあえず自分が名前を知っている候補者に投票してしまうのである。・・・とここまで書いて念のために憲法を見ると、なんと憲法93条2項に「地方公共団体の長は・・・住民が直接これを選挙する」と定められているではないか!!すなわち私の提案は憲法改正をしない限り実現できないのであるが、私は必要があれば憲法も改正するべきだと思っている。